先日お伝えした、トークショーのまとめです。
(参考:フリースケジュール制を導入する工場長さんのトークショーに行ってきました!)
とてもとても、とても長いので、下の目次から気になるところをどうぞ。
目次
- その1(このページ)
- イベントの概要
- イベントスタート 今日の真実
- 会社概要 会社とエビについて
- 株式会社パプアニューギニア海産のエビフライの試食
- 新しい働き方 そのきっかけ
- 働き方を変えて、どうなったか
- フリースケジュール制について
- 嫌いな仕事はしない
- 武藤さんが前提としていること
- その2(次のページ)
1.イベントの概要
2017年6月16日(金) 19時30分〜
@西荻窪 旅の本屋「のまど」
株式会社パプアニューギニア海産 工場長・武藤北斗さん
スライド&トークイベント「小さなエビ工場の世界を変える働き方」
このイベントは、武藤北斗さんの著書「生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方(イースト・プレス)」の発売を記念して行われました。
大まかな内容は、著書「生きる職場」のダイジェストでした。
スライドを使ってわかりやすく説明しつつ、本には載っていないようなお話もありました。
(ネットNGの話もありましたが、それは載せていません)
また、株式会社パプアニューギニア海産の商品であるエビフライの試食もありました。
トークの後は、質疑応答とサイン会でした。
このイベントに参加して、印象に残ったことをまとめました。
2.イベントスタート 今日の真実
会場となった「のまど」の方の挨拶と担当編集の方の挨拶の後に、武藤さんのトークが始まりました。
武藤さんの最初の言葉は、
「私は、考えも言ってることもコロコロ変わります。
でもそれは嘘ではなくて、そのとき思っていることです。
なので今日の真実を伝えます」
というものでした。
武藤さんは、常にどうすれば職場が良くなるかを考えています。
その方法は、現在進行形で少しずつ進化しています。
だから、その時その時で考えが変わるというのは、とてもよくわかりました。
3.会社概要 会社とエビについて
株式会社パプアニューギニア海産は、社名の通りパプアニューギニア産のエビを専門に扱っている海産会社です。
エビだけ、しかもパプアニューギニア産のものだけ、というのはとても珍しいそうです。
社長さんと社員2名(工場長の武藤さん含む)、パートさん15名の会社です。
生産が追いつかず、最近5名のパートさんが増えたそうです。
フリースケジュール制を導入してうまくいっている一方、最適な人数がわからないそうです。
これは悪い意味ではなく、これからどうなっていくのかな?とご本人も楽しみな様子でした。
最近よく耳にする「フェアトレード」のようなことをしていますが、フェアトレードの言葉は使わないそうです。
なぜなら、当たり前の関係を築いているだけだからということです。
商品にはとてもこだわりがあります。
添加物は一切使わず最低限のものだけ、それも「本物のこだわり原料」を使っています。
エビフライの加工に使うものは、
- パン粉(岩手産)
- 小麦粉(金沢大地)
- 水(きいとうむら)
- エビ(パプアニューギニア産の船凍品のみ)
たったこれだけです。卵すら使いません。
原料1つ1つに物語のある、こだわりのものを使っています。
洗剤、掃除にもこだわっています。
海のエビを売っているのに、合成洗剤を使って海に流すのは筋が通りません。
無添加の洗剤、石鹸を使い、器具も最小限に抑えています。
手作りにこだわり、1尾ずつ丁寧に作っています。
エビフライの見分け方のレクチャーもありました。
断面を見ると、エビと衣の割合がわかります。
大きく見える商品でも、シッポを見ると本来のエビの大きさが予測できます。
4.株式会社パプアニューギニア海産のエビフライの試食
会場で揚げられた、エビフライが配られました。
食べる前に写真を撮ろうと思っていたのですが、あまりにいい香りで手に取った瞬間食べていました。
なので、食べきる直前の写真です。すみません。
このあとシッポも全部いただきました。
衣は薄いのですが、パリパリでした。
立派なエビは、エビ本来の弾力のある食感でした。
塩は使われていないのですが、ちょうどいい塩加減でとても美味しかったです。
最低限の原料でつくられたエビフライを口にして、今後は原材料をしっかり見て商品を選ぼうと思いました。
5.新しい働き方 そのきっかけ
工場が石巻市にあった頃は1階が工場で、武藤さんは2階からカメラで監視していました。
従業員に対して、とても厳しくしていました。
以前の自分がそうだったので、今の日本の状況も仕方ないとおっしゃっていました。
東日本大震災をきっかけに、「生きる」「死ぬ」「子育て」などシンプルなことを考えるようになりました。
大阪に移住し工場をスタートさせました。
しかし、宮城から一緒に着いてきてくれた社員が辞めてしまいました。
パートさんが会社を好きではないこともわかっていました。
働くってこれでいいのか?と思いました。
働きやすく、会社を好きになってもらえるよう、働き方改革をしました。
それによって会社が潰れてもいいと思っていました。
震災もあり、気持ちがごちゃまぜでしたが、それをきっかけに変わることができました。
6.働き方を変えて、どうなったか
売り上げは多少増えたくらいでしたが、人件費がものすごく減りました。
パートさんが定着したので、毎月のように出していた有料の求人広告が0になりました。
会社が努力したことで、人も変わりました。
気持ちよく会社に行け、働けるので、効率も品質もアップしました。
7.フリースケジュール制について
いつ来ても、何時に来てもいい。
だから連絡の必要がないのですが、これがとても重要です。
新しく入った人は申告しようとするそうです。
パートさん「あの、○日なんですが…」
武藤さん「言うなーー!」
言わせないそうです(笑)
「言わなくてもいい」のではなく、「言わないのがルール」です。
そうすることで、本当の意味で自由に働けます。
なぜ、フリースケジュール制でも大丈夫なのか、それは
- 時給だから
- 必要な生活費があるので働いている→その分は働きに来る
- 出勤日数の変化もない
ただ、出勤日数が週2〜3日から月2日に激減した人が1人いるそうです。
武藤さんも「えぇっ!?」と思ったそうですが、理由は聞いていません。
聞くことがプレッシャーになるからです。
自然と「そういう人なんだね〜」という認識になったそうです。
来社した人数によって、その日の作業が変わります。
そうすると、たまに出来上がる商品の数に偏りが出ます。
そういうときは、お客さんに買っていただけるようお願いするそうです。
セールなどでお客さんにも利益が出るようにするそうですが、これを聞いた経営者の人はとてもびっくりするらしいです。
お話を聞いていると、そういう型破りなところがちょこちょこありました。
そういう「普通では考えられないようなことをやってみる」という姿勢が、今の職場をつくったんだなと強く思いました。
8.嫌いな仕事はしない
きっかけは、自分が掃除嫌いだったこと。
自分が嫌いなのだから、みんなも嫌いだろうと思っていたそうです。
だから、掃除はみんなに均等に割り振っていました。
あるパートさんが「わたしは掃除が好きです」と言ったのをきっかけに、みんなにアンケートを取ってみました。
(最初は、好き→○、嫌い→× の2種類。最近は、◎→大好き も加わったそうです)
そうしたら、見事に好きな作業と嫌いな作業がバラけました。
1つの作業でも好きな人と嫌いな人がいるなら、好きな人に任せた方が気分よく働けるし効率もいいです。
嫌いな作業はしないと言うと、「苦手なことに立ち向かうべきだ」と言われます。
しかし人間生きていれば、立ち向かわなくてはいけないことは山ほどあります。
ならばせめて会社での作業くらい、立ち向かわずに逃げてもいいのではないかとおっしゃっていました。
「休むことを伝えない」ルールと同じように、嫌いな作業は「しなくていい」のではなく、「してはいけない」そうです。
この徹底的なルール作りは、従業員の働きやすさをとことん考えているのだと痛感します。
「不思議なことに、作業の好き嫌いがかぶることはありません」
と本にも書いたそうですが、その直後に全員が×をつけるという事態が発生!
(アンケートは2ヶ月ごとにとっているそうです)
その作業は、床掃除です。
ブラシを使う大変なものでした。
パートさんから高圧洗浄機ケルヒャーの導入を提案されました。
ケルヒャーを買ってみたら作業はずっと楽になり、その後のアンケートでは○をつける人も出てきました。
全員が×をつけるような作業は、そもそもその作業自体に問題があり改善の余地があります。
それを探り、解決策を見つけること。
もし対応できなかったとしても、なんとかする姿勢が大事です。
そしてその上で、従業員に説明して納得してもらいます。
9.武藤さんが前提としていること
- 人は争うもの→だからこそ会社が考える必要がある
- 工場の仕事はつまらない→だからこそどうするか?
- 笑顔はいらない、居心地がよければいい→ウソの笑顔やポジティブではなく、居心地のよさが大事
- いつでも一瞬で最悪の職場になる→だからこそみんなで頑張って持続させる
- 自分が変われたのは偶然
- 失敗したら戻ればいい→行動すること、伝えることが大事
「失敗したら戻ればいい」という言葉はトークライブの中で何度もおっしゃっていました。
とにかく行動すること、これが大事なのだと思います。
会社とは比べものになりませんが、わたしもうつが良くなっていく中で行動することを大切にしてきました。
間違っても失敗してもいい。
行動することで、次にやるべきことが見えてきます。
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